上から塗るもの
エナメルを塗った魂の比重<鏡稜子ときせかえ密室> (講談社文庫)
- 作者: 佐藤友哉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/09/14
- メディア: 文庫
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2作目。
いじめとカニバリズムとコスプレの3題話と転校生による秩序崩壊、
それがぬるぬると絡み合った作品です。
いじめシーンが妙に生々しく、またなまめかしくもありますが。
まあそれは別として。
前作みたいな京極リスペクト(笑)はなくなりましたし、
あまりにもな偏執的な家族愛(妹愛?ユヤの場合そうかも。。。)も鳴りを潜めて。
今回は、この作品中で取り上げられているいじめについて分析しようかと。
鏡家サーガを読む人には、この転校生による構造変化に快哉を叫ぶところもあるんだろうし。
作品の中で、佐藤友哉はいじめを学校社会の必要なものとして捕らえています。
弱者が入れ替わる、という構図こそあれ、弱者が存在し、強者が存在する。
その決定的なフレームワーク自体は変わらないわけです。
現代社会について、たしか私はここでこんな言及をしていたと思われます。
「いじめは現代社会構造に起因する必要悪」と考えてて、
「いじめられっこ」も、その社会の中である意味必要(秩序を維持する上で)なので
一見仲良しグループに見え、問題の発見が遅くなる
(E's cafe 出町店4月9日 「KYが嫌われるわけ」)
現代っこなりの冷めた見方かもしれませんけどねw
(と、勝手に若作りしてみる現役大学生。)
この構造転換と、作品のなかを通呈する「入れ替わり」がオーバーラップするのは面白かったです。
カンバスは変えずに、上から塗りつぶすのみ。
塗りつぶされた自我と、塗りつぶされたアイデンティティー。
エナメル(塗料)って、そういうものなのでしょう。