完全無欠の世界観
- 作者: 西加奈子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/12/04
- メディア: 文庫
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幸せさは当然、不器用な形になりますよね?
そういった物語です。
前半は幸せすぎる家族の物語。
きれいでやわらかい描写で、幸せな家族を描く。
ヒーローな兄貴、おてんばだけど美しい妹。
まあ、裏であんなことになってるとは
そして、その間に位置し、でもそこそこそのお陰でうまく学生生活をサバイブ出来てる少年。
前半は、素敵な家族物語です。
それが、逆に失うことを悲しいものにしている。
完全な世界の、ひとつのピースが外れたとき、その世界は醜くなる。
その壊れ方が。「ギブアップ」の悲しい使われ方です。
そこまでは、中村航にも似て、喪失の描かれ方は、
そこまでの描写がほほえましいだけに悲痛です。
しかし、世界はそれでも動く。
離散していた一家がそろい、そして、かつて幸せの象徴だった犬が病気になったことに直面して、
放浪していた父親のスキルが生かされる。
なんという再生劇。
そうして、世界観は不完全ながらも再生をするのだろう。
死んでしまったものを悔いることは、たしかに必要だろうし、
思いを馳せることも時には感情をなだめるためには必要だ。
しかし、そこから動き出すことも、必要なんだろうね。
そんな思いになれた一作。